大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和40年(行ウ)22号 判決 1968年2月29日

原告 須佐美八蔵

被告 田上稔

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一、申立

(一)、原告は、「被告は尼崎市に対し金四〇〇万円を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求めた。

(二)、被告は、主文と同旨の判決を求めた。

二、主張

(一)  原告

(1)、原告は尼崎市民であり、被告は、もと尼崎市水道企業管理者水道局長であつた。

(2)、被告は、尼崎市水道局長在任中、昭和三六年三月三〇日の尼崎市議会の議決を得て、

(イ)、村上建設株式会社と、工業用水道北配水場構造物築造工事を金二億九、七〇〇万円で、

(ロ)、大吉組と、工業用水道神崎川取水場構造物築造工事を金一億二、八五〇万円で、

それぞれ工事請負契約を締結した。

(3)、被告は、その後、尼崎市議会の議決または尼崎市長の専決処分を経ることなく、前記村上建設株式会社および大吉組と、労務単価を増額することを目的として、前記各請負契約の内容の一部を変更する旨の変更契約をそれぞれ締結し、これに基づいて、村上建設株式会社に対し金一、六六四万一、〇〇〇円、大吉組に対し金三〇三万八、六七一円、合計金一、九六七万九、六七一円の増額支出をした。

(4)、そこで原告は、昭和四〇年三月二九日、尼崎市監査委員会に対し、被告のなした契約変更ならびに増額支出は違法であるから被告に損害の補てんをさせる措置を求める旨の監査請求をしたが、同監査委員会は、同年五月一九日、同月一七日付書面をもつて損害補てんの必要を認めない旨の通知をした。

(5)、しかし、被告のなした右変更契約の締結ならびにこれに基づく増額支出は違法である。即ち、本件各請負契約は、昭和三八年の改正以前の地方自治法九六条一項九号により、尼崎市議会の議決を経たものであるから、これらの契約を変更するには、同法一七九条、一八〇条に基づいて長の専決処分によるか、または、議会の更正議決によらなければならないのに、変更契約は右のいずれの手続をも経ていないから、その違法であることは明白であり、これに基づいてなされた増額支出もまた違法である。

(6)、変更契約に基づいてなされた増額支出がなければ、それだけ尼崎市の損失はさけられたわけであるから、被告の右違法行為によつて尼崎市は右増額支出と同額の損害をこうむつた。

(7)、よつて原告は尼崎市に代位して、被告に対し、右違法支出による損害の内金として金四〇〇万円の支払を求める。(もつとも原告は当初は損害の内金二〇〇万円の支払を求めていたが、その後請求を拡張した。)

(8)、(被告の主張に対する反論)

被告は、本件には地方公営企業法の適用があるから変更契約の締結は違法ではないというが、地方公営企業は議会の議決の下に行動することを許されているものであり、管理者の契約締結権は、議会の議決を経たものをその趣旨と範囲内において担任事務として契約を締結する権限にすぎず、しかも本件では事務量は増加しないのにたんに労務単価を値上げしたにすぎないのであり、結局被告の主張していることは変更契約締結の違法性を阻却する理由とはならない。

また、被告は、労務単価の増額は労働省の告示を基準にしたのだから変更契約は違法ではないというが、労務単価について労働省の告示の変更があつたからといつて変更契約が違法でなくなるわけではない。

更に被告は、変更契約自体は表見代理の法理により有効であるから、これに基づく増額支出は違法ではないとしているけれど、これは対内関係と対外関係とを混同するものであつて、対内的には、被告の行為が権限を逸脱した違法行為であることに変りはない。

被告は、尼崎市にとつて損害は生じていないというが、本件労務単価の改訂は、もとの請負契約で定められた工事をするにすぎないのに請負人の利潤を確保するために追加支出されたものであるから、尼崎市が損失をこうむつたことは疑う余地がない。

被告は、被告には賠償責任はない旨のべているが、工事の遅延を防止することは当然であつて、そのためにとられた措置だから被告の責任がないとはいえない。また、本件各請負契約には、労務単価を時価により改訂する旨の特約はなかつたこと、本件工事が二年にわたる長期工事であることは当初からわかつており、また、台風などの災害も予測したうえで契約を結ぶのが通常であること、工事の途中における労務単価の改訂は一般的に行われていたものではなく、その前例も一件にすぎないこと、請負業者は常に営利を追求すると同時に損失の危険をも負担しているのであるから、億をこえる巨額の取引においてその一部にすぎない労賃を独断で増額支出しなければならないほどの必然性、緊急性もなかつたこと、被告は本件工事に関し請負業者との間に収賄事件をおこして起訴され有罪判決を受けたこと、以上の点から考えても被告に損害賠償責任があることは明らかである。

(二)  被告

(1)、原告主張の請求原因事実のうち、(1)ないし(4)の各事実はいずれも認める。

(2)、しかし、変更契約の締結は違法ではない。即ち、

(イ)、尼崎市の水道事業については地方公営企業法の適用があるところ、同法および同法をうけた尼崎市契約条例は管理者たる被告が尼崎市を代表して契約を締結しうる権限を認めていることは明らかである。そして、労務単価の改訂による契約の変更についても、一般に建設業法一九条七号で価格変動による請負代金額の変更を当然予想しているところである。従つて、基本となつた契約を結ぶことについて尼崎市議会の議決を経ている以上、その承認の趣旨を逸脱しない限り(本件は逸脱していない)、変更契約をすること自体についての議決を経なかつたとしてもなんら違法ではない。また尼崎市契約条例七条によると、見積価格が三千万円を越える工事その他の請負契約を結ぶときに市議会の議決が必要であるが、本件労務単価改訂による変更契約は右金額以下のもので、必ずしも市議会の議決を経ないでもよいのである。

(ロ)、仮りに右主張が認められないとしても、尼崎市契約条例一〇条一項、一一条によると、管理者たる被告は、本来なら尼崎市議会の議決を経なければならない契約であつても、急施を必要とするときは、地方自治法に定める長の専決処分によるほかに、同市議会の議決を経ないでその契約を締結する権限があるものとされており、変更契約の締結は、右にいわゆる急施を要するときに該当するから、同市議会の議決を要しないのであり、従つて違法ではない。

(3)、仮りに変更契約の締結が違法であつたとしても、増額支出までが違法になるわけではない。即ち、工事請負契約などの市の非権力的作用については民法の適用があるところ、管理者たる被告は地方公営企業たる尼崎水道事業にかかるものについては市を代表して契約を締結する権限を一般的に有していたこと、被告は、同市議会の議決を経ないで請負人らと変更契約を締結したこと、請負人らは、被告にそのような権限があると信じたこと、また、請負工事において契約の変更は、一般的におこりうるものであり、本件各工事とも当初同市議会の議決を経たものであるが、比較的軽度の変更は議会の議決を経ないで行われており、全国的にも同様な扱いがなされていたことからみて、請負人らが、被告に変更契約を締結する権限があると信ずるにつき正当な理由があつたこと、以上の点からみて、変更契約は、表見代理の法理によつて有効であり、従つて有効な契約に基づいてなされた増額支出自体は適法であつてなんら違法ではない。

(4)、契約変更によつて尼崎市に損害が生じたことはない。

本件工事等を含めた工業用水道第二期拡張工事は、一日約一三〇万円の収益をあげうるものである。そして第二期拡張工事の主工事である本件北配水場の工事は、昭和三八年六月二八日ころ竣工という形になつているが、実際には同三七年八月中旬ころには殆んど完成し、使用可能であつて、通水を開始していたのである。もし労務単価の改訂がなかつたならば、労務者の確保が困難となり、通水開始は少くとも数ケ月遅延していた筈であり、遅延による損害はきわめて大きくなつていた筈である。従つて、尼崎市にとつては損害は全くなく、差引大きな利益を得ていることになる。更に、労務単価改訂による増額支出があつても、その対価である価値ある労務は尼崎市において取得しているから、尼崎市としては損害はない。

(5)、変更契約は、つぎのような事情によつて締結されたものであつて不当ではなく、被告に損害賠償責任はない。即ち、(イ)、第二期拡張工事は、尼崎市にとつて極めて緊急を要する地盤沈下の防止と通水利益の早期確保という至上命令下にあつて、とにかく工事の遅延をさけなければならなかつたのであるが、本件労務単価の改訂は、工事の遅延を防止するためになされたものであること、(ロ)、本件各工事の工期は昭和三六年四月一日以降であるから、労務単価については同三六年度の労働省告示を基準にするのが妥当なのであるが、本件各請負契約が締結された当時には同年度の告示は出ていなかつたため、同三五年四月一日の告示を基準とせざるをえなかつたのであり、当初から一般市場における労賃に比して低額であつたこと、(ハ)、昭和三六年六月の集中豪雨および同年九月の第二室戸台風の影響で、その後労賃が約三割程度急騰したが、これは当初から予見できなかつたこと、(ニ)、本件工事は二年にわたる長期のもので工事量が極めて大きく、労務単価の改訂を認めないと、他の単年度の工事にくらべて不公平な結果ともなり、しかも改訂額は、他の工事において使用していた単価の程度にとどまるものであり、かつ昭和三六年一一月一日以降の残工事分についてのみ実施したにすぎないこと、(ホ)、水道事業における他の請負契約においても、一般的に同様な改訂がなされていること、以上のような事情があつたために、契約変更がなされたのである。

(6)、なお原告は、請求を拡張したが、拡張部分の金二〇〇万円の請求については出訴期間が遵守されていないから、右拡張には異議がある。

三、証拠<省略>

理由

一、原告が尼崎市民であること、被告がもと尼崎市水道企業管理者水道局長であつたこと、被告が、同水道局長在任中に、昭和三六年三月三〇日の尼崎市議会の議決を経て、村上建設株式会社との間に工業用水道北配水場構造物築造工事を金二億九、七〇〇万円で、また大吉組との間に工業用水道神崎川取水場構造物築造工事を金一億二、八五〇万円で、それぞれ請負契約を締結したこと、その後、被告が、尼崎市議会の議決または地方自治法に定めてある長の専決処分を経ることなく、村上建設株式会社ならびに大吉組と、労務単価を増額させることを目的として、右請負契約の内容の一部を変更する契約(以下たんに変更契約という)を結び、これに基づいて、村上建設株式会社に対して金一、六六四万一、〇〇〇円、大吉組に対して金三〇三万八、六七一円、合計金一、九六七万九、六七一円の増額支出をしたこと、そこで原告は、昭和四〇年三月二九日、尼崎市監査委員会に対し監査請求をしたところ、同監査委員会は、同年五月一九日に、同月一七日付書面をもつて原告の請求は理由がない旨の通知をしたこと、以上の各事実は当事者間に争いがない。

二、そこで、尼崎市議会の議決を経ることなくなされた変更契約の締結が違法であるか否かについて検討する。

ところで、昭和三八年法九九号による改正前の地方自治法(以下旧法という)九六条一項九号によれば、普通地方公共団体が、条例で定める重要な契約を結ぶには議会の議決を要するとされており、成立に争いのない乙一号証の一によると、尼崎市契約条例七条は、これをうけて、見積価格が金三、〇〇〇万円をこえる工事その他の請負契約を結ぶときは、尼崎市議会の議決を経なければならないとされているのみで、いつたん議会の議決を経て締結された契約を変更する契約を結ぶことについても再び議会の議決を要するのか否かについては直接の規定は存しない。従つて、変更契約の見積価格が金三、〇〇〇万円以下であれば、尼崎市契約条例七条によつて、議会の議決を要しないという解釈もなりたちうる余地はあるが、しかし、重要な契約については執行機関にまかせきりにしないで事前に議会に関与させて議会の意思を尊重しようとしている法のたてまえや、もし変更契約をするについては議会の議決を要しないとすると濫用される危険があることなどの点から考えて、いつたん議会の議決を経て締結された契約の変更契約をするには、変更契約の見積価格いかんにかかわらず再び議会の議決を経ることを要すると解するのが相当である。従つて、基本たる契約を締結するについて議会の議決を経ている以上、その承認の趣旨を逸脱しない限り、変更契約自体にはあらためて議会の議決を要しないという被告の主張は採用できない。

もつとも、尼崎市契約条例一〇条一項、一一条によると、本来ならば議会の議決を経なければならない契約であつても、急施を要するときは、地方自治法に定める長の専決処分によるほかに、議会の議決を経ることなくその契約を締結することができるとされている。しかし、右規定は例外的な規定であるから厳格に解釈する必要があり、従つて右にいわゆる急施を要するときとは、議会の議決をまつて契約をしていたのではその目的を達しえないというような緊急な必要性がある場合をいうものと解されるところ、本件全証拠によつても、変更契約の締結が右にいわゆる急施を要するときにあたるものとは認め難い。

そうしてみると、変更契約は、いずれも旧法および尼崎市契約条例に定めてある議会の議決を要しない場合にはあてはまらないことになるから、原則どおり、尼崎市議会の議決を経なければならなかつたわけである。従つて、変更契約の締結は、客観的には法令に違反した違法な行為であるといわざるをえない。(もつとも、地方公営企業法は昭和四一年法一二〇号をもつて改正され、管理者の契約締結権限が大巾に拡張されたけれども、(同法四〇条)本件には右改正法の適用はないから前記結論には変りがない。)

なお、被告は、変更契約は表見代理の法理によつて有効であるから、これに基づく増額支出は違法ではないというけれども、変更契約が私法上有効であるかどうかということと、対内関係において被告の行為が法令に反した違法な行為であるか否かということは、全然別個の事柄であり、表見代理が成立するからといつて被告の行為の違法性が阻却されるわけではないから、被告の右主張は採用できない。

三、しかし、昭和三八年法九九号による改正後の地方自治法(以下新法という。なお本件監査請求および訴訟には、新法二四二条および二四二条の二が適用されることについては、昭和三八年法九九号付則一一条参照)二四二条の二の一項四号に定めるいわゆる代位請求は、その規定の趣旨から明らかなように、普通地方公共団体が、職員の違法な行為または怠る事実によつて損害をこうむつたときに、その職員に対して有する損害賠償請求権などの実体法上の損害補てん請求権を、その住民が、当該地方公共団体に代位してこれを行使することを認めたものである。従つて、その要件としては、たんに職員の違法な行為等によつて地方公共団体に損害が生じたことのみでは足りず、その職員が、地方公共団体に対して、損害賠償義務などの実体法上の損害補てんの義務がある場合であることを要するものと解される。そこで、被告の尼崎市に対する損害補てんの義務の有無について検討する。

職員が違法行為等をして地方公共団体に損害をこうむらせたときに、その職員の当該地方公共団体に対する損害補てん義務については、旧法当時は、二四四条の二において、出納職員等の損害賠償責任を定めているのみで、その他の職員の損害補てん義務については一般的な規定は存しない。しかし、その他の職員については全く無責任とすべき合理的根拠はないから、これらの職員については民法上の損害賠償義務があるものと解される(新法二四三条の二の九項はこれを裏付けるものというべく、このことは旧法当時においても同様と考えられる。)しかしながら、その他の職員について民法上の損害賠償義務があるということは、民法をそのまま適用することを意味するものではなく、地方公共団体とその職員との間の公の勤務関係は公法関係に属するという特殊性を考慮して、民法の原則を修正して適用する余地と必要性があるものと考えられる。即ち、民法の一般原則によると、故意または過失があるときは損害賠償義務が発生するものとされているが、職員が地方公共団体に対して直接損害賠償義務を負う要件としては、民法の一般原則を修正して、職員に故意または重大な過失があることを要するものと解すべきである。蓋し、国家賠償法一条二項によると、公務員は、故意または重大な過失があるときに限つて国または公共団体から求償されることになつており、これは、軽過失の場合までも求償義務があるということでは公務員が職務の執行について躊躇するようになり正当な職務の執行さえ充分に行いえなくなるから、これを防ぐという政策的な理由に基づくものであり、この理は、職員が地方公共団体に対して直接損害賠償義務を負う場合にもあてはまるものと考えられ、従つて、国家賠償法の精神から考えて、職員に故意または重大な過失があるときに限つて損害賠償義務を負うものと解するのが相当といえるからである。そこで、被告が、前記の違法な変更契約を締結するについて、故意または重大な過失があつたか否かの点について検討する。

証人福井勝己、同山中麟之介、同西谷菊太郎、同流郷奈佑の各証言ならびに被告本人尋問の結果と右流郷奈佑の証言ならびに弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙三号証の一ないし一二、同四号証を総合すると、(イ)、尼崎市においては、従来から、議会の議決を経た請負契約等の設計変更などによる契約変更については、あらためて議会の議決をとらない慣行があり、他都市においても同様な扱いがなされていたこと、(ロ)、被告は、変更契約を締結するについて、従来の慣行に従つて、議会の議決を経なかつたにすぎないこと、(ハ)、被告および尼崎市水道局の担当者は、見積価格が金三、〇〇〇万円以下のものについては議会の議決を要しないという尼崎市契約条例は、本件各変更契約の締結についても適用されるものと考え、変更契約は適法になされたものと信じていたこと、(ニ)、変更契約は、なんら合理的な根拠なしになされたものではなく、昭和三六年六月の集中豪雨および同年九月の第二室戸台風によつて人夫が不足するようになり、労賃も高騰したが、人夫を確保しなければ工事が遅延するおそれがあつたので、そのために労務単価を改訂する必要があつたこと、(ホ)、労務単価の改訂は、残工事についてのみなされたものであり、しかも改訂の基準については大蔵省、通産省、自治省、会計検査院等の関係官庁の承諾をえたうえでなされたものであつて、改訂の巾も不当とはいえないこと、以上の各事実を認めることができる。

これによると、被告は、変更契約を締結するについては、尼崎市契約条例七条によつて、尼崎市議会の議決を経なくても違法ではないと信じたというのであり、この解釈は、さきにのべたとおりあやまつていると考えられるけれども、被告のなしたような解釈も成り立つ余地がないわけではなく、現に行政の実例においては、議会の議決を経た契約を変更するについてはあらためて議会の議決をとらないことが慣例とされているというのであるから、被告が右のような解釈のもとに行動したとしても、あながち重大な過失があつたということはできない。のみならず、労務単価を改訂すべき合理的な理由があつたことや、改訂の巾について関係官庁の諒解をえていることにかんがみ、被告に故意・重過失があつたとは認められないというほかない。

原告は、請負業者は災害などによる損害も予想したうえで利潤を見込んで契約をするものであり、工事の途中で労務単価を改訂するという特約もないのに、業者らから収賄してまで労務単価を引き上げて業者の利益をはかつたのであるから、被告に損害賠償義務があることは明らかだというけれども、前記認定事実にてらしてみると、そうだからといつて直ちに被告の故意・重過失を推認することはできないといわざるをえない。

よつて、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森本正 日野原昌 増田定義)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例